「自分の人生を生きていく」
これは、みんなの学校の教育の目的として持っていることだ。
その目的を達成するために、理念として「ほめない、しからない、認める教育」というカウセリングの考えを取り入れたアプローチを僕を含めたスタッフとキャンプカウンセラー(学生専属ボランティア)は日々キャンプや研修でトレーニングをしている。
そして、その目的、理念を実現するために、ここではフリーキャンプという手法で子どもたちや大人一人ひとりにアプローチしている。
フリーキャンプは、大人側が設定した達成目標やプログラムはない。
その日のスタートミーティングで話し合い、それぞれが自分のやってみたい遊びを決める。
自分の今やりたいことを感じて自己決定をしていく。その遊びは、「穴を掘っていたい」「料理する」「とにかく走る」「ぼーっとアリを見ている」など様々だ。
これは今その瞬間に感じていることを遊びを通して、その人なりの表現することを大切にしているからだ。
自分で何かを感じて決めようとする力、つまり自己決定の能力は大人になって自立して生きていくためにとても大事だという考えから来ている。
用意してるプログラムをゴールまで達成することばかりに固執すると、簡単に大人の意図する良い子ちゃんやレールを歩くことばかり上手くなってしまうのだ。
そして、大人になったときに自分で何を感じていて決めたいのかわからない。完璧主義に陥りがちになる。「人生を進めていくのは道路標識じゃない、ハンドルを握っている自分自身だ」という言葉はとても大好きだ
次に「ほめない、しからない、認める」というアプローチは、子ども自身が自分で決めたことをあれこれコントロールや評価をせずに、その子自身の自己決定をしようとする姿勢を尊重することだ。
例えば、「泥んこでドロドロになって遊びたい」や「遊びで嫌なことがあって悔しかった!」などの感情や子ども自身の決定を「汚れるから」など大人側の都合や「お兄ちゃんだから」などの一方的な価値観で裁かずに関わることだ。
もちろん怒った気持ちを増長することはしない、「そうかあなたは悔しかったんだね」や「泥遊びがしたいんよな」とありのまま感じたことをしっかりと傾聴して受け止めていく。
手が出たりすることや状況によって遊べないときは、もちろんその行動は止めるようにしている。「行動は止めて、気持ちは受け止める。気持ちは裁かれない」大事にしているフレーズだ。
ポジティブなこともネガティブなことも全部含めて、気づいたこと感じたことを色を付けずにそのまんま受け止め光を当てていくと、本来の自分が見つかる。
自分のことを好きとはいえないけど、こんなに尊重されて愛おしいなと思えてくる。
二つとない自分の感性が育つ。つまり自分の中に軸ができることだ。
これが自分軸という自己肯定感が育つプロセスだと僕は考える。
軸がないと、少しのことで過剰に傷ついたり、他人や世間一般の価値観に自分を合わせようとする。
それが現代人が抱える多くの生きづらさの原因だと思う。
自己肯定感が育まれていると、テストの点数や他人の評価に流されず自分の中にある価値観を頼りに生きていくと信じている。
だから、今遊びを通して気持ちや多様性を尊重する現場が求められる。ここは、たくさんの体験をして気づいたことや感じたことを聴き会う場、自分の人生を生きていくためのトレーニングの場だ。
大きな夢を叶えたり、キラキラしたような人生を送ることだけが幸せではない。自分が何を感じていて、自分で人生のハンドルを握って生きているか。何が好きで自分が何を必要しているのか自分と友だちになっていることはとても大事なことで、これが自分の人生を生きていくという幸せだと感じる。
きりかぶのめ バックナンバー
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- 自分とのつながりを。小さくてもある。大きくてもある。(第11回)-きりかぶのめ
- 怒りプンプン!!でも…本当は悲しかったの!(第10回)-きりかぶのめ
- 自分の理解者を増やしていく。信頼を取り戻し。自分の表現が生まれる。(第9回)-きりかぶのめ
- 自分が起点になれば、すべてが遊び、すべてが学び、すべてが楽しい。(第8回)-きりかぶのめ
- 困っていることを素直に言えない自分。ガマン、ガマン。 (第7回)-きりかぶのめ
- なにか手応えのある生き方「自分を生きるチカラ」(第6回)-きりかぶのめ
- やらされてる?とりあえずやっている?やりこんでる?(第5回) - きりかぶのめ
- なるべく小さなしあわせと なるべく小さな不幸せ なるべくいっぱい集めよう(第4回)-きりかぶのめ
- 過不足のない関わりの中で、のびやかに自分になっていく(第3回)-きりかぶのめ
- なにが人生の宝物?~自分の人生を生きることと自己肯定感~(第2回)-きりかぶのめ
- 遊びがわたしの軸になっていく(第1回)- きりかぶのめ